英語の臨界期仮説とは?言語習得や発音は何歳まで?子どもの事例も説明!

Pocket

皆さんは「臨界期(critical period)」という言葉をご存知でしょうか?

一般的にはあまり聞き慣れない言葉かと思いますが、英語をはじめとする言語の分野ではよく知られた言葉になります。

「臨界期」は脳科学的な用語であり、定義としては、感覚機能や言語習得に関わる脳の神経回路が集中的に形成される、人間の発達過程において非常に重要な時期のことです。

では、具体的に臨界期とは何歳ごろに訪れるものなのか、そしてこの臨界期がどのように言語習得に関わっているのか。

この記事ではそれらの点について、エリック・レネバーグが提唱した臨界期仮説と、その臨界期仮説を裏付けるある子どもの言語習得の事例を含めて解説します。

言語習得における臨界期とは?

言語習得における臨界期を代表する一つの説として、ドイツ人の言語学者であるエリック・レネバーグ(Eric Lenneberg, 1921-1975)が提唱した「臨界期仮説(Critical Period Hypotheses)」があります。

彼はその仮説の中で、母語及び第二言語の習得において人間は臨界期と呼ばれる特定の時期を過ぎるとそれらの習得が困難になと主張しました。

そして、臨界期は幼児期から思春期(11〜12歳ごろまで)であり、その時期を過ぎると言語習得能力が徐々に失われるため、母語と同じレベルでの第二言語の習得はできないとしています。

レネバーグは臨界期仮説を立てるにあたり、脳損傷によって失語症に陥ってしまった子どもの患者がどのように言語能力を回復するのか、その経過を発症した子どもの年齢別に調査しました。

そして、その結果を以下のようにまとめました。

  • 2歳ごろまでに発症した子どもは、言語は一度は全て失われてしまうものの、その後言語習得を再開すると順調に言語を回復していく。
  • 3〜4歳ごろに発症した子どもは、元から持っていた言語は完全には失われることなく若干残った状態から言語習得が再開され、その後も順調に言語を回復していく。
  • 5歳以上で発症した子どもは、その発症年齢が上がれば上がるほど元から持っていた言語が残る割合が高くなる一方で、失語症からの回復は遅くなる。
  • 思春期(11〜12歳ごろ)以前に失語症を発症した子どもの言語は最終的には完全に回復されるが、思春期を越えて発症した子どもの言語は長い時間が経っても完全には回復しない。

以上の点から、レネバーグは11〜12歳ごろを臨界期として、臨界期仮説を提唱しました。

ここで、なぜ11〜12歳ごろに臨界期が訪れるのか疑問に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

実はこれには人間の脳が深く関係しています。

皆さんもご存知のように、人間の脳は直感的・感覚的な働きを持つ右脳と、論理的・言語的な働きを持つ左脳に分化しています。

脳は人間が生まれた時にはまだ分化してはいませんが、人間の成長に合わせて徐々に異なる機能を持つようになり、11〜12歳ごろには成人の域に達して左右の分化が完了します。

レネバーグは、脳の分化の完了に伴い、言語を司る左脳の機能が固定されて再編成する能力を失い、その結果として新しく言語を習得することが難しくなると考えたのです。

ちなみに、脳損傷によって失語症に陥った患者の言語能力が回復するというのは、言語を司る左脳の損傷した部位が治癒されるということを意味するのではありません。

左脳の損傷によってそれまで左脳が司ってきた言語能力が失われてしまう場合、本来は言語的な働きを持たない右脳がその役割を担い、言語習得を再開させることになります。

そう考えると、人間の脳は本当に不思議に感じると同時に、素晴らしい機能を持った部位なんだなと思いますね。

臨界期仮説を裏付ける具体的事例

臨界期仮説をサポートする具体的な事例としてよく引き合いに出されるのが、アメリカ人少女のジーニーの事例です。

 

【参考】ウィキペディア「ジーニー (隔離児)」

 (https://ja.wikipedia.org/wiki/ジーニー_(隔離児)

ジーニーは幼少期のころから、実の父親に虐待を受けながら地下室に監禁されて育つという、極めて悲劇的でかつ特殊な環境の中で過ごしてきました。

そうした先の見えない、酷く苦しい状況下でもなんとか生き延びたジーニーは、幸いにも13歳で救出され、その後は実の母親や祖母、里親によって育てられることになります。

救出直後のジーニーは、身長137cm、体重26kgと、7歳児と同じような体型であったことに加えて、それまで人や社会からは完全に隔絶されていたため全く言葉を話すことができませんでした。

言語習得の時期を逸した子どもの貴重な事例として、世界中の言語学者や心理学者がジーニーに着目し、ジーニーの言語習得の過程の記録及び社会への復帰を目的とした支援プロジェクトが発足しました。

その記録によると、ジーニーは単語を発することや二語までの文を話すことはすぐにできるようになったもののそこから先は言語能力はなかなか発達せず、最終的にはプロジェクト発足後5年間受けてきたトレーニングを終えてもまだ意味が通じる言葉を発することができなかったとされています。

さらに、言語学者であるスーザン・カーティスがジーニーに対し、「両耳分離聴検査法」という耳からの音の情報がどのように脳へ伝達されるかを調べるための検査を行ったところ、ジーニーは言語音を言語を司る左脳ではなく右脳で処理をしていたことが判明しました。

このことから、ジーニーは臨界期を過ぎたことによって左脳での言語処理ができず、代わりに右脳がそれを補完する形になったと結論付けられ、臨界期仮説をサポートする事例となったのです。

まとめ

今回は言語習得における臨界期について解説しました。

臨界期仮説についてはレネバーグ以降も多数の言語学者らによって様々な研究が行われており、実際には臨界期の時期についてはもちろん、その臨界期の存在自体が議論を呼ぶものとなっています。

しかしながら、言語習得に臨界期という概念を最初に投げかけた臨界期仮説は非常に重要な説であり、ジーニーの事例も言語の世界では特に有名であるため、知識として持っておくことは決して無駄にはなりません。

また、これから英語を学ぶ方にとっては、今回の臨界期の概念にとらわれずに勉強を一心に続けて頂ければと思います。

何歳になっても学び続ける姿勢というのは非常に素晴らしいですし、継続的に勉強に取り組むことで少しずつでもネイティブスピーカーのレベルに近づくことは可能です。

私自身もまだまだ勉強中の身であるため、今後もレベルが上がると信じてしっかりと学んでいきたいと思います!