
“What is your favourite food?”
上記は「あなたの好きな食べ物は何ですか?」と訳すことができる英文ですが、何か違和感がある、と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。
そして、その違和感の正体はおそらく “favourite” のスペルではないかと思います。
私たちが普段使うのは favorite ですが、実は favourite もスペルミスというわけではなく favorite と同じで「お気に入りの、好きな」という意味を持つ正しい英単語です。
ではなぜ同じ英単語にもかかわらずスペルが異なるものが2つあるのでしょうか?
それは、英語には大きく分けてアメリカ英語(American English)とイギリス英語(British English)の2種類があるためです。
この記事ではアメリカ英語とイギリス英語の違いについてスペルや発音、表現方法の違いを解説するとともに、どちらの英語が主流かであるかについても説明します。
日本での英語はアメリカ英語が主流
アメリカ英語とイギリス英語の違いを解説する前に、まずどちらの英語が主流であるかについてですが、私たちが住む日本での主流はアメリカ英語になります。
私たちがこれまで学校の授業で習ってきた英語はもちろん、街で見かける看板や広告の表記、テレビやラジオから聞こえてくる英語は基本的には全てアメリカ英語です。
これは、皆さんもご存知の通り日本は歴史上アメリカの影響を大きく受けた国であり、社会的にあらゆる面でアメリカナイズされているためです。
その日本で英語が用いられる、ましてや英語の教育が行われるとなるとアメリカ英語が元になるのは必然的ですよね。
ちなみに、アメリカと日本以外でアメリカ英語が主流な国としては、カナダ、フィリピン、韓国、中国、ブラジルなどがありますのであわせて覚えておいて下さい。
日本人としては慣れ親しんだアメリカ英語が世界的にも主流だと思いがちですが、実際にはアメリカ英語よりもイギリス英語が世界的には多数派であり主流になります。
イギリスに地理的に近いヨーロッパはもちろん、イギリスの旧植民地の多いアフリカや東南アジア、そしてオーストラリア・ニュージーランドなどは全てイギリス英語が中心です。
このように、アメリカ英語とイギリス英語は使用されている国や地域は大きく異なりますが、英語の種類が異なるというだけであってどちらがより優れている、多数派の方が良いなどというようなことは一切ありません。
日本で英語を勉強する上ではアメリカ英語だけで十分ですが、もしイギリス英語圏の国・地域での仕事や移住を考えていらっしゃるのであればイギリス英語がどんなものかも知っておく必要があるので、この後に紹介する違いをぜひ学んで下さい。
【関連記事】なぜ英語が世界各国の公用語になったのか?その理由と歴史的背景を解説!
アメリカ英語とイギリス英語の違い
ここからはアメリカ英語とイギリス英語の違いについて具体的に解説していきたいと思います。
アメリカ英語とイギリス英語の違いとしては大きく分けて、スペル、発音、表現方法(言い回し)の3つがあります。
1つずつ詳しく見ていきましょう。
①スペルの違い
まず、1つ目の違いはスペルです。
この記事の始めにも favourite という単語を一例として挙げましたが、アメリカ英語とイギリス英語では単語のスペルの一部が異なるケースが下記のようにいくつかあります。
1.アメリカ英語「-or」⇔ イギリス英語「-our」
【例】color⇔colour(色)、honor⇔honour(名誉)、behavior⇔behaviour(行動)
2.アメリカ英語「-er」⇔ イギリス英語「-re」
【例】center⇔centre(中心)、theater⇔theatre(劇場)、meter⇔metre(メートル)
3.アメリカ英語「-ize」⇔ イギリス英語「-ise」
【例】organize⇔organise(組織する)、recognize⇔recognise(認識する)、realize⇔realise(理解する、実現する)
上記で対となっている単語は、それぞれスペルの違いこそありますが意味・役割は全く同じです。
アメリカ英語に慣れている日本人にとっては、こうしたスペルの違いの法則があるということを知らなければ、イギリス英語の単語を初めて見た際には違う意味を持つ別の単語だと思ってしまうかもしれません。
上記以外にもスペルの異なる単語はたくさんあるため、アメリカ英語とイギリス英語のそれぞれの単語をしっかりと見比べて、違いを一つずつ覚えていくことが大切です。
今まではただのスペル間違いだと思っていた単語が実はイギリス英語だった、ということもあったりして自分なりに新しい発見ができればさらに楽しく英語を学ぶことができると思います!
②発音の違い
2つ目の違いは発音の仕方です。
発音にも様々な種類がありますが、ここではその中で最も代表的な “r” と “t” の発音の仕方の違いについてそれぞれご紹介します。
r の発音の仕方の違い
単語の末尾や子音の前に r が来る場合、アメリカ英語では r を舌を巻いて発音しますが、イギリス英語では r を舌を巻かずに長母音のように伸ばして発音します。
例えば “bird” という単語の場合、あえてカタカナで示すとすると、アメリカ英語では「ヴァード」と舌を巻いてある意味で英語らしく発音しますが、イギリス英語では「バード」と r をこもらせることなくシンプルに伸ばす音として発音します。
その他には以下のような単語で r の発音の違いがあります。
単語 | アメリカ英語 | イギリス英語 |
---|---|---|
here | ヒヤー | ヒァー |
your | ユゥァー | ユァー |
star | スタァー | スター |
t の発音の仕方の違い
次は t の発音についてです。
アメリカ英語では t の発音は d や r の音に近い発音をするのに対して、イギリス英語ではしっかりと t の音を発音します。
例えば “water” という単語の場合、アメリカ英語では「ウォラー」と t をはっきりとは発音せず、むしろ r に近い発音をしますが、イギリス英語では「ウォター」とはっきりと「t」を発音します。
その他には以下のような単語で t の発音の違いがあります。
単語 | アメリカ英語 | イギリス英語 |
---|---|---|
letter | レラー | レター |
better | ベラー | ベター |
party | パーリィー | パーティー |
発音の違いをカタカナで書くとネイティブの発音とは少し異なるもののその違いがよりイメージしやすくなりますよね。
カタカナから見ても分かるように、アメリカ英語よりもイギリス英語の方がしっかりと発音をしますので、英語の学習を始めたばかりの方にとってはイギリス英語の方が少し聞き取りやすいかもしれません。
今回ご紹介した r と t の発音の仕方の違いだけでなく、アメリカ英語とイギリス英語ではアクセントの位置やイントネーションが異なる単語や言葉がたくさんありますので、一つひとつの違いを楽しむつもりでそれぞれの英語のリスニングを行って頂ければと思います。

③表現方法(言い回し)の違い
3つ目の違いは表現方法、言い回しの違いです。
これは同じ意味を持つ言葉や同じものを指す単語に関して、アメリカ英語とイギリス英語では別の言い方をするということです。
以下にいくつかの例を挙げてみます。
日本語 | アメリカ英語 | イギリス英語 |
---|---|---|
秋 | fall | autumn |
映画 | movie | film |
携帯電話 | cellular phone | mobile phone |
サッカー | soccer | football |
地下鉄 | subway | underground |
郵便 | post | |
地下 1階 2階 | basement floor first floor second floor | underground floor ground floor first floor |
上記のように、アメリカ英語とイギリス英語では言葉や単語によって表現方法・言い回しが異なります。
自分が勉強したい英語の方だけの表現を集中的に覚えても良いですし、両方とも覚えても良いと思います。
これら以外にもアメリカ英語とイギリス英語とで表現が異なるものはたくさんありますのでぜひ探してみて下さい!
アメリカ英語は関西弁、イギリス英語は標準語?
最後に完全な余談です(笑)
ここまでアメリカ英語とイギリス英語の違いについて簡単に解説をしてきましたが、この違いを私たち日本人にとって分かりやすく例えると、アメリカ英語は関西弁でイギリス英語は標準語です。
これは使用している人口や地域の数から、圧倒的多数派のイギリス英語は標準語で少数派のアメリカ英語は関西弁に例えています。
標準語と関西弁はリズムやイントネーション等の発音が違ったり、ともに日本語であるにもかかわらず同じ意味の言葉を別の言い回しで表現したりしますよね。
例えば、発音の違いとして「あくび」という言葉では、標準語では「あ」にアクセントを置いて「あくび(↘︎→→)」となるのに対して、関西弁では「く」にアクセントを置いて「あくび(↗︎→↘︎)」となります。
また、別の言い方をする例として、感謝の意を表す言葉は標準語では「ありがとう」と言うのに対して、関西弁では「おおきに」と言います。
こうした標準語と関西弁の違いが、アメリカ英語とイギリス英語の違いに似ているということを頭の片隅にでも置いておいて頂ければと思います!
まとめ
今回の記事では、アメリカ英語とイギリス英語の違いについて解説をしました。
英語を勉強する私たち学習者の立場からしてみれば、同じ英語にもかかわらずスペルや発音、そして表現方法が異なるなんて覚えることが多くなるだけなのでやめてほしいという感じですよね(笑)
しかし、それこそが言語学習の醍醐味であるという考え方もできます。
アメリカ英語とイギリス英語の違いを自分なりに理解し、それらを感じながら楽しんで英語の勉強に取り組んで下さい!