
英語を勉強する日本人が直面する大きな壁としてリスニングとスピーキングがあります。
これには日本の英語教育が深く関係しており、中学校や高校での英語の授業はリーディングとライティングを中心にこれまで行われてきた一方で、リスニングとスピーキングについてはあまり重要視されてきませんでした。
学生時代を通じて何年間も英語を学んできたにもかかわらず、英語を聞き取ることができない、話すことができないという方が多いのは日本の英語教育が一因であると言っても過言ではありません。
そうした中で、英語の習得やリスニングとスピーキングのスキルアップを目指す方におすすめの勉強法がシャドーイングです。
そこでこの記事では、シャドーイングの正しいやり方やコツ、効果といった概要の解説に加えて、シャドーイングのおすすめの教材をいくつかご紹介しますのでご参考にして下さい!
シャドーイングは英語中級者〜上級者向けの勉強法になります。
英語の勉強を始めたばかりの方や初級者の方は、シャドーイングよりも少し難易度を下げた勉強法であるオーバーラッピングから取り組んで頂くのがおすすめです。
オーバーラッピングについては、シャドーイングとの違いを含めて下記の記事で詳しく解説していますのでぜひご参考にして頂ければと思います。
【関連記事】英語のオーバーラッピングの方法や効果は?シャドーイングとの違い解説!
シャドーイングとは?
シャドーイング(shadowing)とは、英語の音声を聞くと同時にそれを追いかけて音声と同じように英語を発する勉強法です。
音声を追いかけるという点で、影(シャドー)のようであるということからシャドーイングと呼ばれています。
シャドーイングの大きな特徴は、英語の音声を聞く前、あるいは聞いている間はスクリプトを見ないという点です。
スクリプトを見ながら行うオーバーラッピングと比べると、実際に音声を聞くまでどのような英語が流れてくるのかが分からないシャドーイングは音声の聞き取りが難しくなります。
それに加えて、シャドーイングは音声を聞くと同時に発声するため、英語の音声と自分の声とが重なり合って聞こえることになります。
音声を聞き取ることができなければ当然ながら発声することもできなくなるため、シャドーイングがいかに難易度の高い勉強法であるかが分かるかと思います。
ではなぜシャドーイングがこれほど難易度が高いかと言うと、実はシャドーイングはもともと同時通訳のためのトレーニングとして行われていたからです。
当然ながら同時通訳を行うにはその両方の言語を母国語レベルまで習得し、かつリスニングとスピーキングに加えて翻訳のスキルとそれを瞬間的に頭の中で処理する力が求められます。
そうしたコミュニケーションのエキスパートとも言える同時通訳のトレーニングということを考えると、シャドーイングは英語の勉強法としてはレベルが高いことは言うまでもありません。
しかし、たとえ最初のうちは難しく感じたとしても、継続的に繰り返し行うことで英語のスピードやリズムに次第に慣れることができます。
地道な努力が必要となりますが、英語の習得を目指して取り組んで頂ければと思います。
シャドーイングのやり方
シャドーイングは難易度の高い勉強法であるがゆえに、正しいやり方でステップを一つずつ踏んで行わなければ効果が出にくかったり上手くできずに途中で諦めてしまったりしてしまうかもしれません。
そうならないためにも、シャドーイングを行うにあたってはこれから解説する以下のステップを確実に踏んで、正しいやり方で行って頂ければと思います。
Step1 リスニング
シャドーイングのファーストステップはリスニング(listening)です。
まずはスクリプトを見ずに英語の音声を全文を通して一度聞くことから始めます。
話の内容や場面、話し手と聞き手の特徴など、音声から得られるあらゆる情報を意識的に聞き取り、全体の内容を大まかに掴みます。
このとき、一つひとつの単語の発音や英語特有のリズム・イントネーション、強弱や抑揚といったところまで聞き取れればベターです。
音声は基本的には一度だけ聞いて次のステップに進みますが、まだ始めたばかりの慣れないうちは一度だけでは理解が難しいかもしれませんので、その場合は何度か聞いてから次のステップに進むようにして下さい。
Step2 マンブリング
次のステップはマンブリング(mumbling)です。
マンブリングとは、音声を聞きながらそれを真似してボソボソと小声でつぶやくことです。
スクリプトを見ずに、英語の音声を聞いてそれを追いかけるようにしてマンブリングを行います。
シャドーイングを行う前にマンブリングを行うのは、いきなりシャドーイングを行うとどうしても英語の音声と自分の声とが重なり合って聞こえることに戸惑ってしまい、思うように英語の音声を聞き取ることができなくなってしまうためです。
その点、マンブリングは小さな口の動きでかつ小声で行うため、シャドーイングと比べると音声に付いていきやすく、また小声ゆえに自分の声よりも英語の音声がしっかりと聞こえるというメリットがあります。
マンブリングで予行演習を行っておくことでシャドーイングに取り掛かりやすくなります。

Step3 シャドーイング
3つ目のステップはメインとなるシャドーイング(shadowing)です。
スクリプトを見ずに、聞こえてくる英語の音声のスピードやリズム、イントネーション、強弱、抑揚などを意識しながら音声から1〜2秒ほど遅れて追いかけるようにして発声します。
ここで大切なポイントが2つあります。
1つ目は、聞こえてきた英語の音声と同じように自分自身も発声することです。
ネイティブスピーカーになったような気持ちで英語を発し、それを積み重ねていくことで次第に英語特有の発音を身に付けることができます。
そして2つ目は、シャドーイングの途中で音声に付いていけなくなったり、聞き取れなくてつまずいたりしたとしてもすばやく立て直してそこから再開することです。
シャドーイングは1回だけで終わるものではなく、そのスクリプトの英語がスムーズかつナチュラルに発声できるようになるまで何度も繰り返し行うことで初めて効果が出ます。
途中でつまずいたとしても、その後をおろそかにせずに続けることが次回以降の成果に繋がるということを忘れずに取り組んで頂ければと思います。
Step4 スクリプトの確認
4つ目のステップでは、シャドーイングを一通り終えたところでスクリプトの確認を行います。
スクリプトを見て、自分がどれくらい正確に英語を聞き取ることができていたか、そして聞き取れていなかったのはどの箇所であったかを確認する作業です。
聞き取れていなかった単語やフレーズはその箇所の音声を流し、発音やイントネーションを1つずつ確認しながら音に慣れるまで何度も聞き直します。
また、このときリスニングにおける自分の弱点を知ることも大切です。
英語のスピードやリズム、音の連結(リンキング)や強弱、「sとth」「bとv」といった具体的な音の違いなど、自分が苦手とする要素をしっかりと見つけて知ることによって、シャドーイングを行いながら改善することが可能になります。
Step5 シャドーイング(2回目)
最後のステップは再びシャドーイングです。
Step3での1回目のシャドーイングと比べて、ここではスクリプトを一度確認してからのシャドーイングとなるため、音声から流れてくる英語やそれぞれの発音がある程度分かる状態になります。
その分英語が聞き取りやすくなりますし、聞き取りに余裕ができるとより自分の発声に集中することができ、リスニングとスピーキングの相乗効果が期待できます。
これ以降はシャドーイングを何度も繰り返し行い、必要に応じてスクリプトを確認しながら最終的には音声と同じようにスムーズに英語が発声できるようにトレーニングを積み重ねていきます。
1つの音声(音源)のシャドーイングができるようになれば、また新たな音声を準備して次のシャドーイングに取り掛かり、自分の目標とするレベルまでリスニングとスピーキングのスキルを向上させましょう!
おすすめのシャドーイングの教材
シャドーイングの効果を最大限にするために必要となるのが良い教材です。
ここでは私自身も使用していたおすすめの教材をいくつかご紹介します。
速読英単語

Z回出版から発売されている英単語帳で、いわゆる「速単」です。
大学受験に向けて多くの学生が愛用するこの英単語帳ですが、実はシャドーイングの教材としても有名です。
速単の特徴としては、様々なジャンルの英単語の意味やそれを用いた例文が載っていることはもちろん、200語前後で構成された英文が1冊あたり50〜70ほどあり、新しい単語を学びつつ英文を速読する力も身に付けられるという点が挙げられます。
速単は「入門編」「必修編」「上級編」とレベルごとに分かれており、それぞれリスニング用の音声CD付きのものがあります。
ぜひ自分に合ったレベルの速単を選択し、CDを有効に活用してシャドーイングをおこなってください。
【Z会 速読英単語 ウェブサイト】

公式 TOEIC Listening & Reading 問題集

TOEICテストの開発機関であるアメリカのETS(Educational Testing Service)が制作する公式問題集です。
本番のテスト同様の問題構成になっており、TOEICで高得点を取るための勉強をしたいという方にとってはこの上ない教材になります。
リスニングのセクションについては Part1 〜 Part4 の4つに分かれており、リスニングの英文の長さは Part1 が最も短く、Part2, 3, 4 と進むにつれて長くなりレベルも上がっていきます。
その点、リスニングはもちろんシャドーイングとしても非常に有用なセクションとなっており、1つずつリスニングとシャドーイングを繰り返して行うことで自然とスキルを向上させることができますのでぜひチャレンジして下さい!
【公式 TOEIC Listening & Reading 問題集 8 ウェブサイト】

TED Talks

TED Talks とは、政治や経済、医学、心理学、教育、環境などといった様々な分野のスペシャリストによるプレゼンテーションを YouTube のように無料で視聴ができる動画配信サービスです。
プレゼンターは与えられた短い時間(20分以内)の中で、自身のトークテーマについて非常に質の高いプレゼンテーションを行います。
TED Talks をシャドーイングの教材として使用するメリットには大きく分けて2つあります。
1つは、様々なトークテーマの中から自分が興味のあるものを選択することができるため、モチベーションを高く持って取り組むことができることです。
そしてもう1つは、プレゼンテーションという形式であるため音声CDとは違って人が話す言葉、つまり口語的でより自然なコミュニケーションとしての表現や言葉遣いを学ぶことができることです。
まだ TED Talks を視聴したことがないという方はぜひ一度ご覧になって頂ければと思います。
【TED Talks ウェブサイト】
まとめ
今回の記事では、シャドーイングの正しいやり方の解説とおすすめの教材の紹介を行いました。
シャドーイングは難易度の高い勉強法であると同時に、トレーニングを重ねることでリスニングとスピーキングの両方のスキルを向上させることができる優れた勉強法でもあります。
また、初めの慣れないうちは自分のシャドーイングを録音し、それを聞き返して英語の音声と自分の発声とを客観的に比較するなど、自分なりの工夫をしながら着実に行うことが大切です。
そうすることで、シャドーイングを自分のペースで根気強く行うことができるようになり、自分が目指すレベルまでより早く到達できますので、前向きかつ継続的に取り組んでいきましょう!